白水社、見事。

白水社の「エクスプレス」シリーズというのは、
以前から語学入門書として屈指の好シリーズだ、と思っていた。
入門書、というのは、それ1冊読めばその言語がマスターできる、
などという有り得ない目的のために書かれるものではない。
初学者に、その言語の学習の、将来にわたる核となる部分を
しっかり学ばせるものである。
その点、記述の妥当性、例文・応用問題の適切さ、
どの点をとっても、このシリーズのバランスの良さは特筆物である。
しかもコンパクトである。
いまやシリーズ3代目の「ニューエクスプレス」シリーズが刊行中である。
ところが、ここに最近面白いものが加わってきた。
ある地域(あるいはテーマ?)に添って、
いくつかの少数言語を簡略に紹介する、というもの(ニューエクスプレス・スペシャル)である。
先般出た「日本語の隣人たち」では、
サハ語、セデック語、ユカギール語、エスキモー語など8言語を
簡略な文法と若干の会話文(CD録音付き!)で紹介していた。
そして最近、「ヨーロッパのおもしろ言語」として、9言語を収めた新刊が出た。
この中には、私も長らく待ち望んでいたフェーロー語やルクセンブルグ語、
ソルブ語やロマニ語、フリジア語といった、
よだれの出てきそうな言語が入っている。
今日買ったばかりでまだ録音は聞いていないが、
なにかとても豊かな気分になれる。
もちろんこれで、各言語が話せるとか読めるというわけではない。
しかし、ここには、少数言語の実際に少しでも触れて、
人類の言語世界の豊饒さを味わいたい、という知的欲求をひしひしと感じる。
実用性(これも必要だが)ばかりあくせくと追いかけて、
こういう部分をないがしろにすることは、したくない。
白水社の「エクスプレス」シリーズは、これらの出版によって、
より巨視的なパースペクティブを持ったシリーズとなった。
語学書を教養書として読んだって、いいじゃありませんか。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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