抽象的音声記号

『世界中の言語を楽しく学ぶ』を書いた時、
抽象的音声記号などを工夫しても面白い、という主旨のことを書いた。
なんとなく読まれた方が大部分かとは思うけれど、
「何の事を言っているんだ?」と思われた方も多いのではないか。
ここで、その真意を説明したいと思う。
音声記号については、先日の音声学についての記事で述べたように、
国際音声記号というものが決まっていて、
これを用いることが精密表記には一番だ、ということになっている。
しかし、最大の難点は、この記号があらゆる文字と同じく、
発音との間に論理的関連をもたない、純粋な記号である、という点である。
したがって、各々の記号が示す音については、実際に耳にしなければ推測もできない。
また、各記号が特定の音種を示すため、「摩擦音一般」「閉鎖音一般」などという
抽象的分類をしめすことが不可能だ、という点である。
特に言語における音変化を記す場合は、
文章によって説明するしか方法がなく、
その規則性を実感できない。
その不便を何とか克服したい、と思って考え出したのが
以下の「抽象的」(しかしある意味で「具体的」な)音声記号である。
それは、「調音点」「調音法」などを子音・母音を表わす基本的記号に
書き加えてゆく、視覚的記号である(「図」に近いかもしれない)。

基本的記号とは、「子音一般」と「母音一般」を表わす記号である。
まず子音から。下の図を見てほしい。

子音

a)は、音声学でよく見る、発音器官およびその周辺の断面図である。
(b)は、(a)のうち、口の部分のみを取り上げたもの。この形は、アルファベットのCの形に似ている。
これを英語のconsonantの頭文字cの大文字Cと通じるものとみなし、子音の基本記号とみなす。
(c)これが子音の基本記号である。これを(b)の図と比べれば、ほぼ相似形なので、調音点を示すのに具合が良い。

次は母音。

母音

(a)は、口の内部における、各母音の調音点(その母音を発する時、舌が口蓋に最も近づくポイント)である。
これを概念的に逆三角形に見立てて、その三角形を「母音三角形」などと呼ぶ。
(b)はそれを概念的にとらえた図。これはアルファベットのVの字、英語のvowelの頭文字vの大文字Vに似ている。
(c)はそれを記号化したもの。これが母音の基本記号。

抽象的母音記号は、この2つの基本記号に、種々の記号を付して記すものである。
詳細は、次回述べる。
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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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