ピランデッロのこと

試しに『ムクドリと百一天使』を訳してみたのだが、
ピランデッロの短編は、私にとって懐かしい思い出で、
イタリア語の原書を初めて買ったのが、
このピランデッロの「Dal naso al cielo」と「L'allegrata」という、
「一年間の物語」中の2短編集だった。
『ムクドリ~』は前者に収められていた。
ピランデッロは、前衛的な戯曲を書いた人で、
イメージとしては理知が勝ったかのような印象を持つ向きもあるだろうが、
実はシチリアの風土を言葉に乗せたような
「歌うようなイタリア語」を書かせたら右に出る者はいない、
と私は思っている。
彼の作品を読んでいて、或る時点で突如、
イタリア語が歌いだすように感じる瞬間がある。
その美しさは譬えようも無いもので、
イタリア語を勉強してよかった、と心から思う瞬間である。
この短編で言えば、殺された少年にまつわるエピソードと、
ポポネがその少年のことを思いながら、月光の下をロバに揺られて行くシーンなどである。
拙訳で十分の一でも伝わったかどうか。
そしてそのシーンで感じるものは
もう血肉となった「神の存在の確信」みたいなものだろう。
映画「道」にも通じる、イタリア文化の核心ではないだろうか。
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テーマ : イタリア語
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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