辞書の価値判断

 バリ語の会話集の調べをしていて、以前購入したバリ語―英語辞典を使っているのだが、この辞書のアルファベット表記はバリ文字(今は殆ど使われていないらしい)を文字転写したものらしく、会話集のアルファベット表記と若干食い違う。たとえば母音の前には基本的にhが表記される。最初は少し戸惑うが、慣れればそれほどでもない。しかしバリ語にはその内部に、階層による語彙や表現の違いがあって(日本語の敬語みたいなものを想像してもらえばそう遠くはない)、これをマスターするのはバリ社会に暮らさないと無理だろうと思う。インドネシア語からの借用も多そうである。バリ研究者以外にとっては、むしろ言語のヴァリエーションを知るための良いサンプル、と捉えた方が良いように思う。
 こんな風に少数言語の辞書を始めて使って見ると、一々の辞書の良し悪しや有用性は、使って見なければ分からないものだということに改めて気づかされる。買ってあるからOK、と思っていては駄目なのである。新しい辞書を買ったからと言って古い辞書がそう簡単に捨てられないのは、この価値判断が難しいからということもある。辞書整理は難しい。大きな書庫があれば、捨てずに全部持っていたいのだが。
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井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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