『ムクドリと百一天使』 4

 ロバかい? ああすぐにでも! ポポネになら一ヵ月でも貸すだろうし、一年だって、いや、たぶんロバをプレゼントすらしただろう、そして全財産だって与えただろう。もしも……
 「初めから言ってみる、お馬鹿さん? もう口を開かないで!──一週間必要なだけだから、ファヴァーラの妹のとこへ行かなくちゃならないの。」
 彼はファヴァーラという名を聞くと取り乱し、一人であの村へ行くなどとうてい賛成できないと言った。あそこじゃ人を殺すなんて、ハエを殺すみたいなもんだ。そしてこんな話もした。ある時、ファヴァーラのある住人が、カービン銃がきちんと装填されたか試そうと、通りに面した出口に立って、前を通る最初の人物に向けて発砲したそうだ。それからまたある時、ファヴァーラの馬車引きが、夜、大通りで出会った十二歳の少年を乗せてやったが、その子を眠っている間に殺したそうだ。というのも、少年のポケットの中で三枚の銅貨が音を立てたからなんだ。その少年の喉を、かわいそうに小羊みたいにかき切って、タバコ銭にしようとその小銭を三枚自分のポケットに突っ込んだ。その死体を垣根の後ろに放り捨てて、「はいどう!」と馬に声をかけて、ゆっくり、歌いながら道中を続けたのさ、満天の星の下を。奴を見つめ続けている神の目の下を。しかし、殺された者の哀れな魂は復讐を叫び、神の思し召しで事態はこう展開した。つまり馬車引き自身がファヴァーラに着いてから、主人のいる車宿へ行く代わりに、警備隊の詰所の前で立ち止まり、血のついた銅貨三枚で自らの罪を明るみに出してしまった。まるでもう一人別の人間が、その口を通じて話したかのように。
 「神様に何ができるか、分かるでしょ?」──ポポネはそこで言った。──「だから私は怖くなんかないわ。」
 リージ小父さんは、一緒に行くと言い張ったけど、彼女は頑なだった。それなら別の人からロバを借りるわ、と言って。そこで彼は折れて、次の日の明け方に、雌ロバを一頭、彼女の家の前に、鞍やら何やらを付けて置いておくと言った。
(つづく)
 
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井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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