慌ただしい昨今

 フィンランド語の小説の翻訳本を校閲したので、著者ご本人が来日されて対談を行うのに招待されて聞きに行った。
 大変誠実そうな著者で、心温まる思いがした。
 それにしても、フィンランド語の知識を校閲の仕事で要求されるとは思わなかった。フィンランド語は一般に言われているより手強い言語で、語幹が複雑というか不規則に変化するので、辞書を引くのも一苦労、というものだから、フィンランド語の原書を横においても、該当箇所を見つけ出すのに苦労したりして、もう少し勉強しておけばよかったなと後悔もした。語彙も、近縁のエストニア語は除いて、他の言語と共通するものが少ないので難度は結構高いのだ。
 そして今の担当本はロシア関係である。ロシア語の読みのルビを振らなければいけないところがたくさんあり、それを任されたのでこれも大変である。発音はすぐに分かるが、それをどういう片仮名表記にするのか、スペルを基準にするか、実際の発音(スペルと若干離れてしまう部分がある)を基準にするか、で悩み、もう一般に通用している名詞などの表記との整合性の程度をどれくらいにするか、で悩む。もうほとんど誰も気付いてくれない悩みである。それが面白くもあるのだが。
 定例の校閲講座の他に、高校生相手に校閲の話をするとか、社外の主催者の講座で校閲の話をする、という仕事も舞い込んできた。前に終えた翻訳も、急ぎではないが続きの依頼がある。退職までもう半年と少しの時点で、こんなに慌ただしくなるとは思いもしなかった。もう駆け抜けて行くしかないのだろう。
 通勤時に今聴いているのは、リトアニア語とブルトン語。ブルトン語はなかなか頭に入ってこない。あと半年強のうちに、アラビア語の諸方言のリスニングはしておきたいが、全部は無理だろう。家で聴いて勉強する方法を編み出さねばならない(その方が普通だろうが、長年電車でやっていたものだから、かえって戸惑うのである)。電車で読んでいるハンガリー語のガルドニ・ゲーザの『ビビ』という小説も、遅々たる進み具合だからとても退職までには終わらない。続きはどうしようか。考えると頭が痛い。しかし時間は平然と過ぎ去っていくのである。
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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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