ノーベル文学賞とジャンルについて

ノーベル文学賞がミュージシャンのボブ・ディラン氏に決まって、話題になっている。
私は英断だと思うが、反対する人もいるらしい。
「文学」の定義が問われているのだろう。
芸術的意図を以て言葉で表現されたものは全て文学に含めてよいと私は考えるが、いわゆる小説・詩・戯曲などが文学だと信じている人には不満なのかもしれない。
オペラを音楽に含めても、「言葉を使っているから音楽ではない」とは言わないし、そもそも歌は音楽と言葉が一体化したものとして古くから存在しているので、誰も不思議に思わない。言葉のみで作り上げたものが文学だ、という考えは少し狭量な感じがする。
映画は映像・音楽(または音響)・言葉が融合したものだ。マンガは絵と言葉の融合である。その中の言語的表現は、他の要素との調和も考慮しつつ磨き抜かれた表現であるなら、言語の可能性を広げる立派な作品であると思う。むしろ言語の領域や可能性を広げていると言ってもよいのではないか。脚本やマンガのセリフが文学賞の対象になっても一向にかまわないだろう。また、映画の映像のワンカットが写真賞の対象になっても、マンガの一齣が絵画賞の対象になってもよいと思う。
もちろん従来の言語のみ、映像のみ、音楽のみのジャンルも大いに栄えて欲しい。しかし、ジャンルの壁を絶対だと思わずに、自由に表現すべきだ。「このジャンルの繁栄のために、この賞はこのジャンルのみに留めて欲しい」という主張は、ちょっと料簡が狭いし、ひ弱な印象を受ける。「そうか、私も別ジャンルとの融合表現に乗り出そう」と思うのが芸術家だという気がするのだが。
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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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