校閲講座・第1回

 水曜日に校閲講座の第1回を行った。
 人前で話すのは大変緊張する性質(たち)なので、結構疲れた。
 しかし皆さんとても熱心に聴いてくださって、気持ちの良い仕事でもあった。校閲という仕事の意義や心構えみたいなことを中心にお話をさせてもらった。
 色々な知識が役に立つという話の流れで、私の個人所有のさまざまな外国語辞書や、文法ノートなどを持参して来て希望者に見てもらった。こんなもの興味を持つ人はあまりいないんじゃないかと思っていたが、結構面白そうにご覧になっていたのが意外な気がした。
 次回は校閲で失敗する時のスタディーケースみたいなことが中心になる予定。いずれ翻訳校閲の話などもするつもりである。「外国語の知識は校閲の役に立ちますよ」という話も素直に聞いてくれるのは隔世の感がする。昔は翻訳物の原文を見るなど余計な事だ、くらいに言われていたのだから。なんとなく、外国語をやっている人間に反感を持っているような空気もあるように感じていた。
 ウィキペディアについての質問も出て来た。「ウィキペディアをむやみに否定する人がいるけれど、あれほどの広がりを持ったツールを切り捨てるのはいかにも勿体ない。限界も知ったうえで上手く使うことを考えた方が良い」と言ったら、わが意を得たりという反応だった。
外国語を読めるようにして、調べる項目に関連した国のウィキペディアを調べた方が、他のサイトや書籍体資料を当たるより確度の高い情報を得られる場合も多いのではないか。外国の事象に関する書籍体資料の制作過程を考えれば、そちらにだって絶対的信頼が置けるとは、長年校閲をやってきた者としては言いきれないのである。ネットで原語で複数のソースから確認を取る、という方法も考えた方が良い。日本語の情報に関しては、ウィキペディアを入口として書籍体資料で再度確認するというのも利用法である。とにかく、まだ新しいツールである。可能性を簡単に葬り去るのは安直すぎないか。

 というようなことを考えた第1回目の講座であった。
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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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