本にまつわる雑感

 丸善でシェイクスピアの「マクベス」原書ペーパーバックを買った。意外と手頃なペーパーバックが無いのに驚く。英米でも、古典を文庫的なサイズの本で読もうという人が減っているのだろうか。だとしたら、全地球的に言語芸術の受容の仕方が変化しているのかもしれない、とふと思う。
 出版不況と言われて久しいのだが、言語がコミュニケーションの手段であるとか、表現の重要手段であるという事実は今後も変わらないものと思われる。しかしその伝達方法、表現形態は変化する余地があるだろう。現に電子メディアの出現以来、コミュニケーションの方法は劇的に変化している。手紙を書くという行為は何か特別なものになってしまったし、電話をかけて会話するというのも、緊急連絡の選択肢の一つに格下げされてしまった。
 本とか文学というものの意味合い・形態もこれと無関係というわけにはいくまい。文学と言えば小説であり、戯曲的なものは本で読むか舞台を見るかという二者択一である、という状況にもあちこちから変化の兆候があるように思われる。エッセイマンガに見られるように、絵と言葉の無理のない融合があったり(これはまだ初期段階で、さらに色々な形式の融合の仕方が可能ではないかと思う)、戯曲もそういった形式での創作があり得るのではないだろうか。動画で舞台の代わりに戯曲を作品化する、ということもあり得るようにも思う。まだカオスの状態、と言ってもいいかもしれない。
 本はこれからどういう運命を辿るのだろう。出版社で生きてきた人間としてとても気になる。しかし電源も要らずにどこでもいつでも内容を享受できる本というのは、まだまだ強いメディアではないかと思っているのだが。
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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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