ヘッセの詩を訳してみる

ヘルマン・ヘッセの『人生の歌』(Das Lied des Lebens ヘッセの多くの詩から選りすぐった詩集らしい)の冒頭に収められた「春」(Frühling)は、リヒャルト・シュトラウスの歌曲にもなっていることは昔書いたことがある。
この詩集をまだ本格的に読んではいないのだが、心惹かれている。それというのも、この「春」という一編の詩に魅惑されているからだ。どんな歌か、拙訳を添えて示そうと思う。

Frühling

In dämmerigen Grüften
Träumte ich lang
Von deinen Bäumen und blauen Lüften,
Von deinem Duft und Vogelgesang.

Nun liegst erschlossen
In Gleiß und Zier
Von Licht übergossen
Wie ein Wunder vor mir.

Du kennst mich wieder,
Du lockst mich zart
Es zittert durch all meine Glieder
Deine selige Gegenwart.

       春

ほの暗い墓所(おくつき)の中
ずっと私は夢見ていた。
おまえの樹々を、青い大気を、
お前のかぐわしい香りを、小鳥の囀りを。

今おまえは自らを花開かせ
輝きと装いを身にまとい
光りに満ち溢れて
奇跡のように私の前に在る。

おまえは私を再び見つけ出し、
私を優しく誘(いざな)う。
戦(おのの)きが私の体中を貫く
おまえがここに在る浄福ゆえに。



 Grüften(墓所)というのは、老人の籠っている、生気の失せた暗い部屋の比喩だろう。
 ただ春が訪れたという単純なことが、かくまでも輝かしいものと感じられるところに詩人の感性が輝いているのだが、その底にやはり「老いと死」の影も感じられるような気がする。
 しかし詩の受け取り方は人それぞれだろうから、あまり私の解釈を並べ立てるのはよそう。
 とにかく、いずれこの詩集は読みたい。ドイツ語は決して得意ではないのにそういう気になるのは、多言語読書において、自分の感性に訴える作者と出会うことがいかに重要かということの証左であろう。
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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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