「〜してるんじゃねえ。」という言い方について

「〜してるんじゃねえ。」という言い方は、今やごく普通に使われているけれども、私の記憶では、これは比較的最近の言い回しではないだろうか。
昔は「〜するんじゃねえ。」というのが普通で、「〜してるんじゃねえ。」は、言ったかもしれないが、特殊な言い回しだったのではないだろうか。
両者を比べてみると、「〜するんじゃねえ。」は直接的な禁止のセリフで、「〜してるんじゃねえ。」は、すでにその行為をしつつある人間に対して、批判的・揶揄的なダメ出しをしている感じがする。
思うにこれは漫才ブームの頃、漫才の突っ込みとして使われたセリフだったのではないだろうか。「〜している」の部分で、相手の行動を客観的に描写し、「〜じゃねえ。」でそれに突っ込みをいれる、という感じで可笑しさを強調したのではないか。コントの落ちなんかでもよく聞いた覚えがある。
こういう当たり前な言い回しの変遷というものは、意外と辿りにくいものである。言葉は知らないうちに変化してしまうもので、使っている当人は、変化の渦中ではそれに気付かないものではなかろうか。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

「知らないうちに変化する」
その通りだと思います。

私は「世界観」「経験値」「期待値」あたりが気になってしかたありません。
「落とし込む」もそうですが、これらの言葉は50代以上の人は新しい意味に気がついていないようです。いろいろな人に聞きましたが、世代差がはっきりしていておもしろいです。

「落とし込む」ですか。

「落とし込む」の用法を私もよく理解していないのではないか、と感じています。
言葉は不定形の軟体動物のように、気が付くと変わっている、という感じですね。
間違いー正解、という対立軸の日本語論でなくて、「なぜこの現象は起きたのだろうか」というアプローチの方が面白いと思うのですが、大方の人は新しい現象を「けしからん」と感じてしまうのでしょう。
新しい日本語を分析しながら承知しておく(自分が使う使わないは別として)という柔軟性を、歳をとっても持ち続けたいと思います。
プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード