『テトゥン語入門』

『テトゥン語入門』(社会評論社)という本を見つけた。
テトゥン語とは、2002年に独立を果たした東ティモールの公用語である。名前ばかり聞いていて、どんな言語だか分らなかったので、即決で買った。
東ティモールに関する現地調査・評論活動をしている方、修道会のシスター、看護ボランティアの方、そしてポルトガル語の専門家の4人が書いている。いわゆる言語学者がテトゥン語を専門的に分析した結果としての文法書とは趣が違う。
さてテトゥン語とはどんな言語なのだろう。パラパラと本書を眺めていると、あからさまなポルトガル語(かつての宗主国の言語)からの借入語彙・語句を除いた部分は、今まで学んだどんな言語にも似ている感じがしない。分類上はオーストロネシア語族のインドネシア語派に属するらしい。だが一見したところインドネシア語と似ている感じがしない。ただ微妙なのは、歴史的にティモールがインドネシア語の支配を受けていて、その語彙も多く入り込んでいるということで、本来のテトゥン語と近縁のインドネシア語の語彙との区別が判然としない。というより、その両者の境界が本来そんなに截然としていないのである。その上インドネシア語とは似ていない独自の語彙も多いように思える。
いわゆる活用の類はなさそうなので、これはインドネシア語と共通である。こういう場合、語の配列が似ているか否か、が類似性に大きく影響するだろうが、見た所その点判然としない。地理的に離れていたら、こういう分類になるだろうか。言語の分類というものについて、少し考えさせられる。
ただ、数詞を見ていると、「5」を表すlimaという語に目がとまった。これはオーストロネシア語族に広く共通する語彙である。他の数詞はかなりヴァリエーションがあるのだが、このlimaだけは、殆ど変わらない形であちこちの言語に現れる。といっても私に確認できるのは数種類の言語だけなのだが。インドネシア語、タガログ語、ハワイ語、フィジー語、サモア語で全てlimaである。ただしタヒチ語ではpaeである。まだ文法を学んでいないトンガ語ではnima、かなり離れてマダガスカルのマラガシ語ではdímyであり、これらも関連があるだろう。タヒチ語の形はどこから来たのだろうか。
話がそれてしまった。まだ買っただけなので、これ以上あれこれ言えない。学ぶのはちょっと先になりそうだけれど、こういう志のある出版物がまだ出ていることは嬉しい。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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