スロヴェニア語のこと

クロアチア語の耳ならしをした後に、隣国なのでスロヴェニア語を聞いてみようと思い、昔買って調べも済んでいる『スロベニア語会話練習帳』(大学書林)を取り出して来た。
 同じシリーズの『セルボ・クロアチア語会話練習帳』も持っており、例文に共通したものが多いので比較しながらやろうと考えて、『セルボ~』の例文を『スロベニア~』に書き写すということを始めてみた。以前聞いたときの印象ではかなり近い言語だと思っていたが、こうやって比べてみるとずいぶん違う。特にスロヴェニア語には双数という、2つペアになった物や人を指す古い活用が今もれっきとして生きていることや、未来形の独特な活用などがあって、「やはり別言語なんだな」と妙に感心する。
例をあげると、「どこで(私たち〔二人〕はお会いしましょうか?)は、
セルボ・クロアチア語では
Gde ćemo se videti?
(gde=どこで、 ćemo=英語のwe shall、 se=自分(たち)を、 videti=見る。se videtiで「会う」という意味。)
と言うが、スロヴェニア語では、
Kje se bova videla?
(kje=どこで、 se=自分(たち)を、 bova=we two shall、videla=見る〔分詞形〕)
と言う。ここでbovaというのが未来の助動詞の双数活用形であり、しかもそれが取る動詞は原形(不定形)ではなく-l-という音を備えた分詞である。「l(エル)分詞」などと呼んでいるようだが、他のスラブ系言語ではこれは完了分詞の形である。しかしスロヴェニア語では完了形(過去形)にも未来形にもこの分詞を用いるので、「完了分詞」とは呼べないのだろう。まことに奇妙な現象である。「バルカン現象」と呼ばれるバルカン半島の言語独特の現象とはまた別のものだろうか。
 具体的に言語を比較してみると、曖昧な知識も少し整理されるし、改めて言語の形の千差万別なことにも驚かされるものである。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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