『世界言語のなかの日本語』

今『世界言語のなかの日本語』(松本克己著・三省堂)を読んでいる。
もともと日本語系統論にそれほど興味を持っていたわけではない。
世の中にあまりにも粗雑な議論が横行している気がしていて、それらの本をあんまり読む気がしなかった、というのも一因かと思う。
基本的な言語現象への目配りが不足している、というか、言語そのものへの知識・視野が狭すぎるというか、ともかく「言語の系統を論じるのなら、もっと言語を広く渉猟して、きちんと比較して、それから論じて欲しい」と感じることが多かったせいかもしれない。
その点、この『世界言語のなかの日本語』は刮目すべき成果である。そのパースペクティヴの広さはちょっと類を見ない。とにかく世界の言語に広く目配りし、言語現象の比較も冷徹にして実証的、決して先を急がず丹念に体系的に見て行こう、という姿勢がすばらしい。ヨーロッパの言語もアジアのそれも、オセアニア・アメリカ大陸先住民・アフリカの言語も全く平等に扱い、それでいて常に地球全体の言語における現象分布という視点を失わない。言語の比較というのはこのように行なうべきだろう。私のような素人にはとてもかなわない、まさに専門家の仕事である。
これまでに読んだうちでは、人称代名詞の比較と分布、そして人類言語における人称代名詞の祖形の推測が特に面白かった。
凡百の日本語系統論を何冊も読むより、この本を一冊読むほうがよほど問題の本質に近づける気がする。お勧めしたい本である。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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