ダルマチア語の例文

ダルマチア語のフレーズをノートに写している。
死語であるから、これを覚えたところで何の役にも立たない。
しかし、だからこそ、惹かれるのである。
この19世紀に絶滅したロマンス語は、アドリア海の東岸、ヴェグリア島(今のクルク島)と
ラグーサ(今のドゥブロヴニク)で話されていたらしい。
ただ、この2地点は少し離れているので、恐らくは記録されていない時期には
もう少し広く、今のクロアチア地方で話されていたのではないか。
この言語を研究したバルトーリは、古文献を渉猟して、その痕跡を追い求めているが、
気の遠くなるような作業である。それでも、この言語が発達していった経緯というのは闇の中らしい。
具体的に例文を見てみよう。

stu alegro.(彼は〔今〕陽気だ。)
jal fero alegrai.(彼は〔もともと〕陽気だ。)
te te a rasauŋ.(君は正しい。)
join biskaun de lana(一つの木片)
ju bule morar.(私は死にたい。)
żai buŋ.= voi buŋ. (よろしい。)
zaime toč stuff da fur kosta vaita.(私たちは皆、この人生を送るのに疲れてしまった。)
dapu de iŋ kola kal (その時以降)
fin kauk (ここまで)
l-e gres.= el fero gres. (彼は太っている。)

バルトーリの本で使っている記号を若干変えたり、省略してあるので、そこはお許しいただきたい(コンピュータのフォントの制約上)。
大体の感じで、「確かにロマンス語かもしれないが、ずいぶん様子が違うな。」と思われた筈である。
これを見て、「ああ、もっと知りたい。」と思われた方は、私と同類だろう。
もう使われていない、その全貌も明らかでない言語の放つ匂いに惹かれる人間は、少数派であろう。
実用主義とは対極の性向である。
病膏肓、とはこのことかもしれない。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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