グロービッシュが世界語となるには

もしもグロービッシュが世界語になり得るのだとしたら、
それはどのようなプロセスを経れば可能なのだろうか。
グロービッシュは、推測するに、グローバル時代のピジン・イングリッシュみたいなもの、と
考えてよいのではないかと思う。
実用上、自然発生的に形成されつつある言語であり、
これはエスペラントのような、個人の作り上げた人工言語とは違うだろう。
人工言語の弱点は、論理性と自然さのバランスをとることが難しく、
また個人の創作ということで、どうしても功名心という人間の弱点が現れやすく、
反対派が必ず出現して収拾がつかなくなりやすい、とう点である。
ザメンホフは功名心よりも民族間の争いという惨禍を目にしてエスペラントを創ったのだろうが、
周囲の人間はそう思わず、名誉を独り占めされるというジェラシーを感じて
俺の作った人工言語の方が優れている、などという主張をしたこともあったのではないか。
エスペラントの改良、というのもまた多くの人がそれぞれ主張していたりして、
これは果てしない不協和音である。
また純粋人工言語の人工臭さ、というものも嫌う人が多い。
国際補助語と謳っているのだから、そういうものとして使えばいいのではないか、と思うが、
この感情もなかなか消えようとしない。
(実際習ってみれば、想像しているほど人工臭くはないと思うのだが、それでは自然言語とくらべてどうか、と言われれば、やはり全く同じ、とも言いづらいものがあるのは確かである。)
一方、従来のピジンというものは、交易地などで自然発生的に商人間で発生する、などの例があるが、
これの弱点は、スタンダードな形式、というものが存在しない、というか、
標準形というものを確立しようとする意思を多く欠いている、ということである。
狭い地域であれば、無論これでよい。
しかしグロービッシュの場合、世界が舞台となるのだから、そういうわけには行くまい。
各地でグロービッシュの変種がいくつも存在する、というのでは
世界語というには弱いだろう。
ゆるやかな統制、というか、スタンダード化は必要ではないか。
たとえば、「グロービッシュ調査委員会」的なものをネット上に置き、
言語学者などによって標準ボキャブラリー辞典を編纂し、
また英語-グロービッシュ辞典、日本語-グロービッシュ辞典、その他
各国語の複雑な表現をグロービッシュに置き換えるための資料も各国の学者を総動員して編纂し、
それをネット上で無料公開する。
これらの辞書は時代に応じてアップデートし、
古くなった語彙・表現は別個のアーカイブに保存して、
グロービッシュの歴史的文書の将来における解読のために準備する。
また標準会話、入門教科書、読本、ビジネス会話なども編纂し、
全て無料で提供し、各国の教育に流用してもらう。
またネット新聞なども編纂する(現代的な問題をどうグロービッシュで表現するかのサンプルの意味も大きい)。
これらの作業は、すべてその団体の作業とし、個人名は一切冠さない。
語彙・表現の選別基準は「それが実際に多く使われているか否か」に置き、
論理学的というか、神学的論争は排除する。
こんなふうにできるなら、世界語として有望かもしれない。
しかし、お金がかかるし、人手も要る長期に亘る仕事である。
誰が主体になるのか、と考えると、難しいのかもしれない。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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