『ダルマチア語』つづき

バルトーリの『ダルマチア語』(Il Dalmatico)を少しずつ読んでいるのだが、
これを見ると、滅びかけた言語の研究というものがいかに大変で、
また丹念な考察・分析が必要なものか、ということが分って、研究者に敬意を抱かざるを得ない。
限られた文献資料、タイムリミットのあるインフォーマント相手の聴き取り、
それらに基づいての精密な考証、しかし資料の欠落による不完全な結論・・・。
さらに歴史・地理的なバックグラウンドの考察、資料提供者一人一人の位置付けなど。
この地道な道程があって、初めて成立する研究なのだな、と思う。
それにしてもバルトーリに語りかける最後のダルマチア語話者トゥオネ・ウダイナの語りが、
やはりこの研究書のハイライトだろう。
ここには失われた言語の命が今も息づいている。
彼の人生の記憶が、民族の生活の記憶が、その言葉と共にテキストの中で生き続けているのだ。
テキストの最後で、ウダイナがバルトーリに語った言葉。(正確に文字転写できないので、大体の所でご容赦願いたい)
non dimentikuote el vetrun udaina.
(年寄りのウダイナのことを忘れないでおくれ。)

ダルマチア語は滅びたが、この書により今もその名残を我々は感じ取ることができるのだ。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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