言語学習の一般論・フレーズ学習の効用

言語の学習に関する持論を、折に触れて書いてみたいと思う。
今回は、言語学習の一般論及び「フレーズ」を記憶する効用について。
外国語を勉強するときに、よくこう言う人がいる。
「文法は勉強したくない。実際に役立つ言い回しを覚えて、会話をしたい。」
これは、ある意味でもっともな話である。
まったくゼロから言語学習をするとき、
いきなり文法分析の話をされては困惑するだろう。
だから頻繁に用いられるフレーズを覚える。
なるほど、すぐに通じる。面白い。
ここまでは方法と効用が釣り合っている。
しかし、代表的な言い回しで出来る会話の範囲は、限られている。
文法的な運用ができなければ、うまく意思を伝えられない場面に
しばしば遭遇することになるだろう。
さて、文法である。そして単語の記憶である。頭が痛い。
ここで重要なのが、「フレーズを切り出す」能力である。
決まり文句のフレーズは、まとめてくれた本がいくらでもある。
この段階で大切なのが、自分が読んだり目にした文章の中から、
まとまりの良い、使い回しの良い、
単語を入れ替えれば応用の利きそうなフレーズを
切り出してくる能力である。
そのフレーズを文法解釈する(当然、最低限の基本文法は押さえておく。
全く文法をやらないのは、明りも持たずに闇の中を歩くに等しい)。
また、覚えたい単語もできれば単独でなく、切り出したフレーズの中で覚える。
この際、フレーズは口調の良い、5〜6語前後のものにする。
あまり長いと覚えられない。人間の記憶力というのは、そういうものだ。
それをせめて口の中で10回、繰り返す。口調として記憶に刻むためである。
(メモをして、後日また繰り返せば、もっと効果的)。
日常的な表現・単語はこれでかなりカバーできるだろう。
それから先が、やはりボキャブラリーの問題だ。
これはもう、受験生のように覚えるしかない。
しかし、一つの単語を覚えるとき、
「同意語で、もっともよく使われるもの」
「反対語で、もっともよくつかわれるもの」
「スペルが似ていて、まぎらわしいもの」
「その語がもっともよく使われそうなフレーズ」
などを探して覚えるのも良いだろう。
それを調べるのがまた良い勉強になると思う。
辞書を引くのを面倒がっていては、やはり上達は望めない。

ここで唐突だが、言語学習と野球のバッティングを比較してみよう。
素振りは、単語や文法の学習。
ピッチングマシーンでの練習は、フレーズ学習。
ピッチャー相手のシートバッティングや試合形式の練習が、
会話学校などでのレッスンまたはテキストの読解練習。
本物の試合が、現地人との会話。または外国語作品の読書。

こう考えれば、文法や単語学習を嫌っていては、
いつまでも草野球の遊びをしているのと変わらないということが
飲み込めるのではないだろうか。
良い選手は、素振りも真剣に、たくさんやるものだ。

こういう私も、そう理想的にやっている、とは言い難い。
これは自戒も込めて書いているのである。

スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード