ナワトル語および抱合語

多くの言語を勉強した、などと言っても
世界の全言語からみたら、微々たるものである。
だから、私の言語知識も、大きな偏りがあるのであり、
その弱点の最大のものの一つは、抱合語とよばれる言語群に関してである。
これは、具体的には、アメリカ大陸に広がる言語群に多くみられるもので、
接辞や名詞・動詞等が複雑に入り組んで、一つの単語(当然長くなる)を形成する。
エスキモー語も簡単な文法を学んだが、
入門書の記述が簡単すぎて、実態を知るには不足であった。
そこでもう一つ、ナワトル語という、
メキシコのアステカ文明で使われていた言語(今でも使われている)の、
ちょうど実例豊富な入門書があったので、
その実例を読み解きつつ、実態を見てみよう、と思い立った。
ところが、これが手ごわかった。
とにかく長い単語を、どこで、いくつの要素に切り分けるか、が
いつまで経っても分からない。
そのうち気付いたことがある。
この言語は、スペルの原則が確立していないのだ、と。
すでに耳で聞きおぼえている人間が
ただ記録するためにアルファベットをあてがった、
という状態なのだ(実際スペイン語風のスペル、英語風のスペルなどがあるようだ。
過去の宣教師、現代の研究者、などがそれぞれのスペルを使っているらしい。
統一的スペルを作る動きがあるのかどうか、不明にして知らない。)
外国語として学び始めた人間が、スペルを拠り所に分析しようとすると、
もとより難しい言語構造に加えて、この不安定なスペルが邪魔をする。
(ここで語形成の簡単な実例を挙げておこう。これだけでも、どこで区切ればいいのかの難しさは多少お分かりいただけるかと思う。)
tepetl(丘、山)+ yahualli(輪)→ tepeyahualli〔丘の輪、丸く囲むような丘。huaはスペイン風のスペルで、発音は[wa]〕
xochitl(花)+teocuitlayo(黄金の)→ teocuitlaxochitl またはxochiteocuitlayo〔黄金の花〕)
というわけで、いまだに抱合語についての的確な認識には自信がないのだ。
別の言語でもよいから、良い実例を知りたいものである。

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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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