『ダルマチア語』を読む

マッテオ・ジュリオ・バルトーリの『Il Dalmatico』(『ダルマチア語』)を読み始めた。
以前、読者の方より寄贈して頂いたものである(有難いことである。感謝してもし切れない)。
バルトーリが、絶滅したロマンス語であるダルマチア語の最後の話者、トゥオネ・ウダイナ(イタリア語名アントニオ・ウディーナ)をインフォーマントとしてその発話を記録、それ以前の文献や研究と合わせて総合的に探求した記念碑的労作だが、もともとはイタリア語で書いたものを(当時の諸事情により)ドイツ語に翻訳して発表、近年再度イタリア語に逆翻訳されて出版されたものである。
まだ読み始めたところだから、全体像は述べられないが、このウダイナ(愛称をブルブルという)が死んだのが1898年とされている。しかしバルトーリは1897、99、1901年に本人に会って研究しているのだ。
「噂されていたように、死んでいないどころか至極健康で、実際すぐには死ぬつもりもないようだった。」とバルトーリは書いている。
誤報だったのだろうか。
その死亡記事というのは、1898年6月14日のトリエステの新聞『La Sera』紙(『Mattino』紙の号外というか特別号みたいなものらしい)に載った記事である。
「(6月10日)6時半、農村地帯アイ・カンピへ向かう補修中の道路上で、爆薬を装填中に突如それが爆発し、爆薬装填用の金具を持とうとして岩の上に立っていた77歳の善良な老人、アントニオ・ウディーナを即死させた。・・・彼は消え去り行く世代の最後の一人であり、ヴェグリア(注:現在のクロアチアのクルク島)の古いロマンス語方言を知り、完璧に話せる最後の人だった。」
彼の死亡記事はこの新聞にしか載らなかったらしい。誤報の可能性もある。バルトーリは、実際にブルブル(愛称で統一しよう)が死んだ年月を述べてはいないようだが(ざっと今見たところでは。もしかするとどこかに記述があるかもしれないが)、少なくともダルマチア語が消滅したのは1898年よりは後のことらしい。
いずれにせよ、何か数奇なものを感じさせる言語である。読み進めたら、また書くことも出てくるだろう。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

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井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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