slurしがちな言語

モンゴル語を再度聴いていて感じたこと。
この言語は、往々にしてスペルから逸脱した発音をする。
はっきりとスペルから乖離している言語(英語、ゲール語など)とは違って、
一応それに沿ってはいるのだが、時々、母音や音節を飛ばして発音している傾向が見られる。
өгөхгүй(くれない)という語は、テキストの表示では「オグフグイ」とされているが、
実際に聴いてみると、「オッフイ」とか「オッフ」ぐらいにしか発音されておらず、
ずいぶん違うので、以前「ひどく聴き取りにくい言語だ」と思ったのを思い出した。
これは耳が良いとか悪いとかいう問題ではなく、
その言語の発音の緩み方の問題ではないかと思う。
一応吹き込み者は標準的な発音の人が選ばれているだろうから、
初心者のとまどいを取り除くためにも、入門書の筆者は、
実際の発音の省略傾向(英語でいうスラー"slur")を解説して欲しいと思う。
自分が分かるからいい、というのは指導者ではない。
モンゴル語のほかにも、マダガスカルのマラガシ語などもこの傾向がはなはだしい。
これは、スペリングというものが、実際の発音表示と語彙体系表示の両方を兼ねる、
というところに起因するのかもしれない。
発音どおりに書くと、語形の相互の関連が隠れてしまう傾向の言語は、
ある程度発音表示を犠牲にすることもあるからである。
そういえば、オーストラリア英語も母音脱落などが多いように思う。
かといってオーストラリア英語に特別なスペリングを使うこともできないので、
慣れない者はとまどうのであろう。
実際に会話を習う時、発音の逸脱に関する知識があるとずいぶん助かると思うが、
そういう研究をしている人は少ないだろうとも思うのである。
スポンサーサイト

テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

No title

初めまして。リンクに入っていたのでこちらからもよろしいでしょうか?

No title

はい結構です。
ご覧いただいてありがとうございます。
プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード