職業病

 先日、ある人から「校閲をやっていて、職業病みたいなものはありますか?」と訊かれた。
 すぐには思い浮かばず、特にありませんと答えてしまった。仕事で本ばかり読んでいるから、普段はあまり読みたくない、とか、日頃から誤植や言葉の間違いが気になって仕方ない、などといった答えを期待されていたのかもしれない。
 言葉の誤りが気になるというのは、無くはない。しかし、いつも言っているのだが、校閲者は「この言葉は間違い。これが正しい」などと言葉を裁く裁判官ではない。筆者の表現・言語が謗(そし)りを受けることの無いようにサポートするのが役割なのだから、言葉の正誤の判定には慎重でなければならないのである。表現の妥当性に興味はあるが、「言葉の誤りに憤慨している」わけではない。だから気になったとしても、それを病気だとは認識していない。
 本は、仕事とは無関係に、面白ければ読むし、興味を持たなければ読まない。むしろ仕事で強制的に、興味のない分野の資料や本に目を通すのが、自分から進んで勉強しない分野に視界を広げるという意味で、仕事に感謝しているのである。
 どうも「職業病」という自覚は無いのである。もしかすると、ここで書いている多言語学習・多言語読書が続けられている、ということが最大の職業病かもしれない。いままで病気だ、と思ったことはないが。しかし、自覚の無い病人は多いから、その一例なのかもしれない。
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プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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