オリンピック賛歌(ギリシャ語原詩からの翻訳)

東京オリンピック招致が成功して、雰囲気が一変した感じがするが、前回の東京五輪の時小学校5年生だった私は、その後家で買った一枚のレコードを飽かずに聴いていた。
それは「東京オリンピック・マーチ」と「オリンピック賛歌」がカップリングされたレコードである。
「東京オリンピック・マーチ」は古関裕而(こせき・ゆうじ)作曲の、名曲中の名曲で、私にとっても忘れられない曲である。マーチの中の№1である。
さてそのB面(!)の「オリンピック賛歌」は題名は有名だし、開会式で演奏されるから御存じの方も多いだろうが、その歌詞内容はどうだろうか。案外はっきり知らない、というケースが殆どではないだろうか。
この曲は第1回オリンピックがアテネで開催された折、ギリシャ人のコスティス・パラマスが作詞、スピリゾン・サマラスが作曲したものだそうだ。しかしそれ以来楽譜が失われ、演奏されることがなかったものを、1958年に楽譜(ピアノ用のもの)が再発見され、それを前述の古関裕而氏がオーケストラ用に編曲して、再び大会で演奏されるようになった、とのことである。
もとのギリシャ語の歌詞を知りたいと思っていたら、意外やWikipediaで簡単に発見、ここにちょっと原詩の翻訳を試みる。辞書と首っ引きであるが。

Αρχαίο Πνεύμα αθάνατο, αγνέ πατέρα
του ωραίου, του μεγάλου και του αληθινού,
Κατέβα, φανερώσου κι άστραψε εδώ πέρα
στη δόξα της δικής σου γης και τ' ουρανού.

Στο δρόμο και στο πάλεμα και στο λιθάρι
Στων ευγενών αγώνων λάμψε την ορμή
Και με το αμάραντο στεφάνωσε κλωνάρι
και σιδερένιο πλάσε και άξιο το κορμί.

Κάμποι, βουνά και θάλασσες φέγγουνε μαζί σου
σαν ένας λευκοπόρφυρος μέγας ναός.
Και τρέχει στο ναό εδώ προσκυνητής σου
Αρχαίο Πνεύμα αθάνατο, κάθε λαός.


古代の不滅の魂よ、
美しきもの、大いなるもの、不死なるものの、汚れなき父よ、
こなたへ降り立ち、姿を顕(あら)わし、輝きを放て。
汝(なれ)自らの地と空の栄光において。

足競べの、格闘の、石の投げ合いの最中(さなか)、
高貴な戦いの激しさに輝け。
朽ちることなき枝を以て、栄冠を授けよ。
鋼(はがね)のごとく、逞しく、体を鍛えよ。

野も山も海も汝(なれ)と共に煌(きら)めく、
白と紫の大神殿の如く。
ここなる神殿に馳(は)せ来る者、そは汝(な)が巡礼者なり。
古代の不滅の魂よ、そは全ての民族なり。
(訳・井上孝夫)

原文は「大きな、偉大な」の意味の言葉に、古語の μεγας メガス という形を使っている(μεγαλου メガルー という形も現れているが、これは古語μεγαςと現代語μεγαλος メガロス のいずれの属格形か判然としない)。けれども、前置詞ειςと定冠詞τοの組み合わさったστοという現代語の形もあるところから、ほぼ擬古文的な現代ギリシャ語による作詞と思われる。詩なので、語順も若干口語とは違っているところもある。ギリシャ語は現代語の成立に紆余曲折のあった言葉なので、時代的にもうなずけるところである。

この歌には、野上彰氏の日本語歌詞が別に存在する。これは歌詞であるので、このまま歌として歌える。レコードに収められていたのもこの歌詞による歌唱だった。YouTubeでも、長野オリンピックでの、児童合唱団による感動的な合唱を聴くことが出来る。歌詞も示されているページがあるので、是非歌詞を知ったうえで聴いていただきたい。東京五輪でも再度演奏されるだろうが、今から楽しみである。
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テーマ : 言語学・言語論
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

井上孝夫

Author:井上孝夫
多言語の学習・研究、多言語読書を長年続けています。著書に新潮新書『世界中の言語を楽しく学ぶ』『その日本語、ヨロシイですか?』あり。マンガ・イラストの別ブログ「スケッチ貯金箱」もやっています。

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